2021年にリノベーションを手掛けた住宅のクライアントからの依頼だった。
クライアントはアパレルブランドでグラフィックデザイナーとして活躍していたが、幼いころから住んでいるこの地域で商いをし、地域貢献もしていきたいという志があった。そこで新たな仕事として自家焙煎した珈琲豆で提供するコーヒースタンドをオープンした。
建築場所は自宅の庭先とし、職住一体とすることで地域の方たちに身近に感じてもらうことをコンセプトとした。地域の人たちが良く通る遊歩道に面して建つことでコミュニケーションが生まれやすく、店舗と遊歩道の間でも会話が成立する距離感を意識して配置を決定した。
遊歩道との適切な距離感を検討し、「家の庭」と「店舗」の両立に配慮した。
遊歩道からの視線
建築としては幅2m、奥行き1mという、とても小さなものだが、コーヒースタンドに必要な機能をシンプルに整えた。お客様にコーヒーを提供するカウンターは、庭と遊歩道の境界に配置し、庭全体が店舗に感じるように設計。材はレッドシダーの丸太から切り出した大断面をそのまま使うことで店としての存在感が引き立つ様に配慮している。
庇・笠木・雨樋・配電盤は亜鉛メッキ鋼板で統一。マテリアルを最小限に絞ることで、よりシンプルに、庭の緑の中にも違和感無く馴染む。
内装は針葉樹合板+AEP塗装とし、木のナチュラルなテクスチャーを残しつつ、シンプルな仕上とした。2㎡(2m×1m)という小さな空間の中に、必要な機能を集約した。
朝は小学生が店主に「おはようございます」と挨拶をしながら店の前を通る。
通勤や散歩の人たちは早朝からコーヒーを片手に気持ち良さそうに遊歩道を歩いていった。
昼間は子供を連れたお母さんや年配の方々、夕方には帰宅する社会人や学生達が店主に声を掛けながら帰宅していく。店仕舞いした夜も店舗の灯りが遊歩道を通る人たちの為の新しい灯りの1つになった。このコーヒースタンドは新たなコミュニケーションを着実に生んでおり、しっかりと地域に貢献していくことだろう。店主の志を実現できたことを嬉しく感じる。
2023年3月にオープンしたこのコーヒースタンドはOHAYOGOZAIMASUCOFFEEという。
<以下 ブランドWEBサイトより引用>
1日の始まりは”おはようございます”と”珈琲”から。
「OHAYOGOZAIMASUCOFFEE」の「おはようございます」には欧米で使用される「Good morning(あなたに良い朝が訪れますように)」という願いも込められていますが、日本古来、歌舞伎界で早くから準備のために芝居小屋に訪れる役者に対して裏方たちが出迎えの際に使っていた「お早いお着きでございます」という労いと感謝の意味も込められています。
労いと感謝を小さな珈琲豆にのせて、あらゆる人たちの小さな幸せ作りのお手伝い。